アドバンド株式会社 中野道良社長に聞く、優良顧客の獲得に関するケーススタディ(2/4)
「実績ゼロから新規事業を成功させた集客の極意」
アドバンド株式会社 中野道良社長に聞く、優良顧客の獲得に関するケーススタディ(2/4)
「実績ゼロから新規事業を成功させた集客の極意」
急成長中の広告デザイン会社で代表取締役を務める中野道良さん。
パート1では、優良顧客の獲得手法について伺いました。
今回は、実際に中野さんが事業を始めるときにどのような集客を行ったのか、その具体的な手法についてお話していただきました。
『中野道良社長に聞く、優良顧客の獲得に関するケーススタディ』
『中野道良社長に聞く、優良顧客の獲得に関するケーススタディ』
目次
- 会社の成長フェーズによって変化する“優良顧客”の獲得戦略とは
- 実績ゼロから新規事業を成功させた集客の極意(当ページ)
- 上場企業との成約に導いた”販促の設計図”と“本当の顧客理解”
- BtoBで優良顧客の獲得を狙う経営者が今すぐ実践すべきこと
創業時、テレアポは3件で嫌になって…
創業時、テレアポは3件で嫌になって…
(島崎誠:以下、島崎)
どのように集客して取引を増やしましたか。
(中野道良氏:以下、中野)
創業時はいろいろな集客方法を試していましたが、Web広告は全然出していなかったんです。
当時はアナログで、小さな広告を出してみたり、プレスリリースから請求してもらえるようにリリース文を書いてみたり。
あとはダイレクトメールですね。
仕事をいただけそうなお客さんに対して、郵送でアプローチをかけてみるとか。
実は、テレアポもやりました。
(島崎)
中野さんが一番苦手そうなことですね。
(中野)
当時の社員数は私を含めて4人で、私以外の3人がそれぞれ200社ずつテレアポをしたんですよ。
実際にアポイントメントを取れた人もいて、馬鹿にならないなと思ったんですが、私自身がテレアポが嫌で嫌でしょうがなくて。
3件くらい電話して辞めてしまいました。
当時は主に2つの商品で発注をいただいていました。
社内報というパンフレットと、上場企業が個人株主向けに発行するニュースレターです。
それらの受注を狙ってダイレクトメールを送っていたのですが、もう少し工夫できないかということで、島崎さんからリスティング広告をやってみませんかとご提案をいただきました。
私は「リスティング広告って何?」みたいな感じだったと思うんですけど、少額から始められてリスクも少ないので、やるだけやってみようということで、2010年からリスティング広告の運用を開始したんです。
これが会社にとって非常に大きな成長につながりました。
リスティング広告で仕事が増えた一方、業務の平準化が課題に
リスティング広告で仕事が増えた一方、業務の平準化が課題に
(島崎)
現在は商品のラインアップも増えていますよね。
集客もリスティング広告以外に何かされたんですか?
(中野)
リスティング広告を始めてから、リスティング広告とダイレクトメールの二本柱で、ほとんど広告費をかけずに積み上がっていったんです。
仕事が増え、従業員も増えて、しかもあまりなくならない仕事だったので継続性もある。
結構いい事ずくめに見えるでしょう?
これがですね、ちょっと考えなければならないポイントがあったんです。
社内報やニュースレターのような定期的に制作する商品って、ほとんどの企業が同じ時期に発行するんですよ。
正月号とか春号とか。
だから仕事が重なってしまうんです。
そうすると、ある時期はどうしても従業員の残業が非常に多くなったり、ある時期はすごく暇になったり。
仕事の平準化ができないんです。
だから商品としては悪くなかったんですけど、言い方を変えると相当数の人手がないと成り立たないビジネスモデルなんですよね。
しかも一個一個の利益率は決して高くないので、このまま広げていくだけだと疲弊するかなと。
すごく頑張っている従業員が辞めてしまえば、その分の仕事がこなせなくなってしまうので、結構リスクもあると感じていました。
そこで、このままでいいのかというのを考えたのが2016年頃です。
納期ありきで短期集中的にやるようなものだけでなく、半年とか1年ぐらいのスパンで、こちらのペースでスケジュールを組み立てられる商品を取り入れようと思ったんですね。
従来の商品も残しながらそういった仕事の割合を増やそうと。
その半年〜1年単位で組み立てる仕事を考えた結果、社史という商品にたどり着きました。
これは60ページとか150ページあるような、結構大がかりな仕事になります。
例えば50周年とか、短い場合は20周年とか、そういう節目で発行するパンフレットですね。
この社史に目をつけて、また同じようにリスティング広告を出したら、これはこれでまた反響がありまして。
そこで商品ラインアップとして、比較的スパンが長く、余力のあるスケジュールを組みやすい仕事を始めました。
社史の制作経験ゼロでも先に広告を出稿
社史の制作経験ゼロでも先に広告を出稿
(島崎)
その商品構成の変化とともにお客様の傾向も変わってきたのですか。
(中野)
そうですね。
従来から手がけてきた、年4回発行するようなリピート型の商品は、単価が平均50万〜60万円なんです。
一方、この社史というのは、平均単価が当時でも300万〜500万円と、一桁上がる商品なんですよね。
なおかつスケジュールを組みやすいので、仕事が平準化しやすい。
しかも私たちの強みである企画力やデザイン力、編集力を生かせる商品ですから、これは是非やりたいということで始めました。
余談ですが、社史はそれまで一度もやったことがありませんでした。
出来もしないのにやろうと決めたので、反響を見るために先に広告を打って、テストマーケティングをしました。
具体的に言うと、翌年に20周年か10周年を迎える会社を帝国データバンクで調べて、ダイレクトメールを送ったんです。
すると、5社から「ちょっと話を聞きたい」と反応があったんですね。
それらは結果的に受注に至らなかったのですが、反応があるということは分かったので、そのテストマーケティングの後に、リスティング広告を出しました。
ただ、どちらにしても当時私は社史を制作した経験は全くありませんでした。
経験はないんだけど、この仕事をやりたい。他の業種でもそういうケースがあるのではないでしょうか。
そのときにすごくお伝えしたいのが、経験がなくても意外とノウハウって学べるということです。
書籍を読んだり、あるいは他社の事例を見たり、似たようなことをやっている同業他社さんの話を聞いてみたりとか。
あるいはWebで検索すると参考になるページが出てくるので、そういうところから自分なりにノウハウを拾ってテキストにしてみたんですよ。
それからリスティング広告を出して、無料でノウハウブックを配布することで新規顧客との接点を作りました。
全く経験がなくても、ノウハウを作ったことが成功の決め手だったと思います。
(島崎)
商品サービスを頑張って作ってもニーズがない可能性があった中で、新規投入コストを無駄にしないために、まずはテストマーケティングで市場のニーズを調べたんですね。
社史の案件は、今ではどのぐらいの数になったんですか?
(中野)
ちょっと数は正確ではないですけど、30社以上やっていると思います。
実績を重ねるごとに、単価がどんどん上がっていったんですよ。
始めた頃は実績がなかったので、商談に行ってもなかなか受注に至りませんでした。
一方、好奇心旺盛なお客さまもいらっしゃるので、そういう方がちょっと面白そうだからぜひやってみようと言ってくださるんです。
最初は今みたいに100ページ以上のものなんかなくて、16ページ程度のパンフレット型のものから仕事をいただいて、そこから実績をコツコツ積み上げました。
営業に行ったときにも実績が増えれば増えるほど信頼性が上がりますので、それで徐々に大きくなっていって、今では上場企業の仕事もやっています。
参入して8年くらい経ちましたが、現在はすごく立派な商品として機能していると感じます。